「タイムマシン経営」という言葉があります。(浜崎あゆみ戦略ともいう)
すでに「未来」を実現している、最先端の国や地域、いわゆるアメリカ、シリコンバレーなどの企業に注目する。
その技術や経営手法を日本に持ち込んで、競争優位を取る戦略です。
歴史に学ぶ経営知 古くて新しい「逆・タイムマシン経営論」
今日は「タイムマシン経営」の逆の発想を提唱した「逆・タイムマシン経営論」という本が10月8日に出版されましたので、要約、書評を致します。
投資の神様と言われているウォーレン・バフェットの名言です。
「われわれが歴史から学ぶべきことは、いかに人々が歴史から学ばないということだ」
偉大な投資家やビジネスマンは必ず、「歴史」に学べ、という大局観の話をします。
この本はごくごく当たり前かつ、今の変化の速い未来の読めない時代に私たちがわすれがちな「歴史に学ぶ」という「古くて新しい学習法」の重要性を説いています。
飲食の世界でも、素材の鮮度を超えて熟成肉や寿司がフォーカスされてきたように、熟成した情報からゆっくり学ぶ知的作法の提言はまた新しく感じることが出来るのではないでしょうか。
日頃からスピード感をもってインプットをこなす、勉強家の方こそこの本を読んでいただきたいです。
「逆・タイムマシン経営論」の基本情報
親子ほど年齢の離れた2人が、共鳴して生まれた著作です。
基本情報
タイトル:逆・タイムマシン経営論
著 者:楠木 建、杉浦 泰
出版日:2020年10月8日
発行元:日経BP
発売元:日経BPマーケティング
ページ数:270ページ
経済学の教授が温めいてた、「新聞、雑誌の記事は10年は寝かしてから読むと勉強になる」という気づきと、社史研究家の「ビジネスパーソンに長期的視点を提供したい」という気持ちが化学反応を起こした、刺激的な「思考の型」を学ぶ書となっています。
「経営センスを磨く」新しい学びの「お作法」ですね。
過去の歴史から学ぶことの意義を3つの視点から提示されています。
第一章 飛び道具トラップ
第二章 激動期トラップ
第三章 遠近湾曲トラップ
「逆・タイムマシン経営論」の要約
過去の歴史から学べていない理由を「同時代性の罠」と表現しています。
この書では「同時性の罠」は大きく分けて3つあります。
第一章 飛び道具トラップとは
ここでいう「飛び道具」は技術革新にともなう変化のことを言っています。
「サブスクリプション」「IT革命」「DX」「組織改革」などのバズワードを丁寧に成功事例と失敗事例を紐解きながら、成長にともなう『痛み』によるトラップを解説しています。
ひとことでいうと、「ファスト」情報に踊らせられるな。
という事です。
インターネットの発達で、より多くの情報に早く多く、リーチできる時代になっています。
そこで取捨選択し、ご自身の企業の戦略に本当に必要で正しい文脈で活用できていますか?という定義です。
ん
「すぐ役立つものほど、すぐに役立たなくなる」
という、それを言っちゃぁおしまいよ、的な話をしていますが、つい新しいものを取り入れたがる私達には耳の痛い提言です。
第二章 激動型トラップとは
こちらは時代の流れの中でのトラップを説明しています。
常に「激動期」の最前線の中で、イノベーションを起こしたい!と思ってしまいがちですよね。
時代の流れはそれほど、早いわけではない。
大きな変化はゆっくりとしか来ない。
新しい自動車についての進化とインフラについて、技術革新による非連続性の成長と人間のもつ本質、連続性や当事者しか語れない【テンゼロ論】、長期視点での革命とは、具体例をこれでもかと並べて解説しています。
個人的には、「忘れられた革新的製品」の章が面白かったです。
皆さんも懐かしく読めるのではないでしょうか。
大きな変化は振り返ったときにはじめてわかる。
第三章 遠近湾曲トラップ
隣の芝は青く見える
人々の認識バイアスの事です。
「シリコンバレー礼賛」「崩壊する日本的経営」「海外スターCEO」「人口増減」この4点にフォーカスして人の認識バイアスによる遠近湾曲について具体例を挙げて解説しています。
胸に響いたのは
「環境他責」による思考停止。
つい、私たちは「すり替え」ることで他責志向に陥りやすくなります。
「逆・タイムマシン経営論」の書評
頭をガーンと殴られたような、問題提起本です。
リーダーが経営判断を下すための視座を手に入れる為の「指南書」です。
いまだ、ウィズコロナの時代の未来は先行き不透明な時代に向かう方向を、誰もが新しいものをみつけたい、取り入れたいと思っている時。
本質を見極めるために、近過去にさかのぼろう。という本です。
温故知新
学生時代に学んだはずなのに、どうしてもせっかちな私たちは新しいものをとりあえず片っ端から取り入れてチャレンジすることが良い事だとおもってしまう・・・
巷にあるトラップにはまっていたことに、浅はかな私は気づかされます。
知的好奇心を心地よくくすぐる、経営論の教養書です。
リーダーはもちろん、これからリーダーになるべき人にもおすすめです。
つくづく、人間はあさはか。
今こそ歴史に学ぶぼう。
「逆・タイムマシン経営論」の背景
この本は、楠木建先生のファンだったので知りました。
共作ということですが、とても面白いコラボレーションであることが分かりました。
「逆・タイムマシン経営論」の作者詳細
楠木 建(くすのき けん)
一橋ビジネススクール教授
1964年生まれ
89年一橋大学大学院商学研究科修了過程終了
井戸津橋大学商学部助教授およびそうイノベーション研究センター助教授などを得て2010年から現職
専攻は競争戦略
主な著書に「ストーリーとしての経営戦略」
※「逆・タイムマシン経営論」より
杉浦 泰(すぎうら ゆたか)
※「逆・タイムマシン経営論」より
これ凄いですよね、楠木先生が研究を始めたころに生まれた杉浦さんとのこのコラボレーション。
楠木は「雑誌や新聞は10年寝かせて読め。その方がずっと勉強になる」という主張をあちらこちらで書いたり話したりしてきました。いつかは「逆・タイムマシン経営論」を書きたいという構想を持っていました。
※「逆・タイムマシン経営論」 はじめに より
杉浦は大学生当時から社史研究に没頭し、数百社の歴史を比較検討していました。理解を深めるために、日経ビジネス、習慣東洋経済、週刊ダイヤモンド、プレジデントの経済メディアの記事を過去60年にわたって追いかけ、社史にかかれた実像を読み解くという作業を続けていました。
※「逆・タイムマシン経営論」 はじめに より
いわゆる杉浦さんの上司であり、楠木先生の旧知の中上康議氏(みさき投信代表取締役社長)からの紹介で出会うという。
引き寄せの法則という言葉も恥ずかしいくらい、出会うべくして出会った2人。
会ってすぐ「この人は普通じゃない」と直感しました。その場で楠木は「逆・タイムマシン経営論」のアイデアを杉浦に伝え、二人で本を書くことを提案しました。
※「逆・タイムマシン経営論」 はじめに より
このエピソードだけで楽しくて読みたくなりますよね。
「逆・タイムマシン経営論」 まとめ
進化の早い時代につい新しい物ばかりに目が行き、近視眼的になってしまいがちな私たちに本質を見いだし、長期的視点を取り戻せる有効な経営論です。
歴史から学ぶことで、長期的視点を取り戻し心に余裕と、大きらかな気持ちになる久しぶりに爽快な本を読みました。
Twitterのような、多くの情報が秒刻みで、短いセンテンスで大量に流れていく世界にいると、ついスピードの波に飲み込まれてしまい、自分自身を見失いがちになります。
私も、ブログを始めSNS活用を心に決めた初月に、たった1ヶ月で心折れる体験をしました。
第一章ではその「トラップに嵌りやすい人」のプロファイリングも5箇条で提示されています。
会社員をやめたときに、新しい社会に対応するビジネスモデルを学ぶ!と決めた私には当てはまる部分が多分にあり、自分自身を振り返る良い機会になりました。
コロナで外出禁止になった際に何が家庭内で流行ったか、というと本質的な家事だったのですね。
健康管理の為の自炊(料理)、家事全般(時前のマスク裁縫・自家菜園)
人間が生きていくうえで、本質的な事に戻ってきているな、と実感していました。
サービス業においても同じです。
私のサービス業の始まりは飲食業からでした。
今の飲食業界は食を売るのではなく、ファンを付けて体験を売る時代。
これも実は私が始めていた25年前の六本木では当たり前だったことです。
25年通っている美容室も、美容師さんと話に行っているだけです。
私の癒しです。今や技術は買っていない。(いや、テクニックも超一流だけど)
人間の本質は簡単には変わらない、昔のモデルに戻っているのでは、とうすうす感じていたことタイミングでのこの本に出会いました。
まさに「古くて新しい方法論」
読む前と後ではあなたの経営センスは格段に上がること間違いなしです。
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