2021年春夏シーズンのファッションウィークは、予定通り9月13日のNYを皮切りに、ロンドン、ミラノ、パリで開催されることになりました。
一部離脱したブランドもあるが、デジタル配信の含めてパリコレ真っ最中。
そんな時に、過去の偉大なるファッションドキュメンタリーを2本視聴しました。
『ファッションが教えてくれること』『フランカ・ソッツアーニ 伝説のVOGUE編集長』
【Netflix】ファッションドキュメンタリー VOGUE2大編集長編


※シネマトゥデイより抜粋
2人の超有名編集長、イタリアの故フランカ・ソッツアーニとアメリカのアナ・ウィンターを追ったドキュメンタリーです。
先行きの不透明な時代に、自分の信念を信じて前向きに決めて動く、リーダーの姿。
このウィズコロナ時代に勇気をもらえるドキュメンタリーです。
かつてファッションラバーだった私が観終わった今、ファッションより一流のマネジメント能力に参ってしまいました。
ビジネスマンの皆さんも楽しんでいただけます。
2009年「ファッションが教えてくれること」
こちらはアメリカンヴォーグの編集長、アナ・ウィンターをメインに2007年9月号の作成秘話を追うドキュメンタリーです。
基本情報
タイトル:ファッションが教えてくれるもの
公開日:2009年11月7日
監督 : R.J.カトラー
時間 : 1 時間 30 分
出演 : アナ・ウィンター, グレイス・コディントン, シエナ・ミラー
アナ・ウィンターについては映画「プラダを着た悪魔」という作品が有名で、一般的に知られていると思います。
このドキュメントは特大9月号という、ファッション界の新年度、一番重要な時期に発売される雑誌の制作過程を追っていくストーリーです。
超一流の仕事を観ることが出来ます。
決めることの大切さ
ファッションの楽しさも味わえるのですが、編集長としてのアナ・ウィンターの強さが印象的です。
「徹底して決める」
この一言です。
ファッションは半年前にシーズンの発表をします。
先のことなど誰にも分らないし、正解もない中、トレンドを見極めて、テーマを決めて、カバーを決めて、色を支持して、決める決める、決める。
厳しく、編集者を指導する時もあるし、容赦なくボツを入れる時もある。
孤独にして孤高な姿勢で決めていきます。
観ていてとても気持ち良い、部下だったら落ち込むこともたくさんあるでしょうが、上司が明確に「決めて」くれることはとても安心して仕事ができる。
素晴らしいマネージメントが見られます。
とはいえ、厳しくしかりながらもそのあとに、部下からもアドバイスをもらう姿勢など日本でいう、部下との一方的な上下関係ではなく、指導はするけど意見も聞くフラットな関係が見受けられます。
組織の在り方が日本と違うのか、女性マネジメントだからなのか気になります。
才能を見極めて活用する
優秀なマネージャーは、自分より才能のある人を雇います。
アメリカン・ヴォーグにはグレイス・コディントンという天才編集者がいます。
彼女の紙面は段違い!
色使い、服の選び方、カメラマンのダイレクション、遊び心、心躍る紙面をつくらせたら右に出るものはいないでしょう。
現場の最前線で、ファッションの素材をじかに触れて、フィッティングも自分で行う。
完全に職人肌。
彼女もまた、強い。
何度もボツが出てもあきらめず、たんたんと自分のすべき仕事を続けている。
かつ、後輩たちを励ましながら。
素晴らしいプロの仕事が見られます。
そんな、アナはグレイスの作品を何度もボツにしては、自分の意見を押し通し最終的にはやり直した最高のグレイスの特集ページを大々的に取り扱います。
見事なまでのマネジメント力とリーダーシップです。
自分が管理職だった頃、何度もあきらめてしまって部下の才能を引き上げてあげられなかった。
信用していなかった自分の未熟さを思い知らされます。
9月号が完成した時のアナのグレイスを称賛すつ言葉が心を打ちますね。
「私には流行を予見するセンスなどない。グレイスのように変化を見抜く感性はない、ファッションを理解し視覚化できる。プロデュース能力も超一流の天才」だと
しかし、グレイスも自分の強みを理解したうえで、セレブの時代を読み切ってカバーにシエナ・ミラーを押すアナ・ウィンターの実力も認めている。
お互い、意見も持ち味も違けうけれどお互いに認め合っている。
そして、また日常の編集が続く・・・
「ファッションが教えていくれること」まとめ
アメリカン・ヴォーグの編集長がファッション業界のすべてを決めている
という事が良く解りました。
自社の紙面を作りながら、多くのデザイナー、カメラマンと話をする。
大手企業のデザイナー交代について意見を求められて人財アドバイスする、など。
リアルに理解できました。
また、デザイナーの育成。
評価が高くてもビジネス的には成功することが困難な世界で、見極めて指名して育てていくシビアな世界に身を置いている辛さが垣間見えます。
アナ・ウィンターがここまで脚光を浴びるのはこの厳しいビジネスの中で、長く継続してこられたからだと思います。
天才がものをいうファッションビジネスの世界で、地に足をつけて才能を見極めて活用してきたから今がある。
1992~1999年という一番ファッションが勢い良かった黄金期にアメリカン・ヴォーグは人気なかったのです。
それほど影響力もありませんでした。
その間、光り輝いていたのはヴォーグイタリアとハーパース・バザーだったのです。
ハーパース・バザー誌の名物編集長、リズ・ティルベリスががんで亡くなってからヴォーグは息を吹き返します。
そして現在があります。
イギリスのヴォーグ紙の元同僚で切磋琢磨したアナとリズ。
リズの方が先に脚光を浴びたが、やはり淡々と自分の仕事をし続けて今のファッション業界ではなくてはならない存在までいったアナ・ウィンターの魅力が存分に堪能できます。
フランカ・ソッツアーニという危険な存在
1990年代からファッション誌と言えば、ヴォーグイタリアの時代でした。
それは2代目編集長フランカ・ソッツアーニが、1988年から2016年の無くなる直前まで活躍した時まで続きました。
2016年 「フランカ・ソッツアーニ 伝説のVOGUE編集長」とは
彼女が残した功績は大きいです。
スーパーモデルを生み出し、ジャンニ・ヴェルサーチというスターデザイナーの発掘、カメラマンの才能開拓、問題提起
これをすべてファッション誌で行った最初の人物です。
基本情報
タイトル:タイトル:ファッションが教えてくれるもの
公開日:2016年11月7日
監督 : フランチェスコ・カロッツィーニ
時間 : 1 時間 19 分
出演 : フランカ・ソッツァーニ、フランチェスコ・カロッツィーニ、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ
このドキュメンタリーは彼女の息子であるフランチェスコ・カロッツィーニが撮影している。
家族からの質問に時に感情的に答え、母親やであり、一人の女性でもある姿をみられるドキュメンタリーは、驚きと共に刺激的でした。
時には女の子のように拗ねている彼女を観られるのは、息子が質問するからなのか、陽気であけっぴろげなイタリア人だからなのか。
ファッション誌のフレームを壊したイタリアン・ヴォーグ
彼女の作る雑誌は大いなる物議をかもした。
ファッション誌は商業的でなくてはいけない、という保守的な意見にことごとく逆らいカメラマンに権限を譲渡して自由な紙面を作り、アートとしての側面を大きく打ち出した。
強い信念で、カメラマンを信頼して新しい雑誌を作り上げたのです。
このドキュメントの中で、カメラマンは常に笑顔で笑っている。
信頼されている安心感、活躍の場をもらっている信頼関係が強く見られます。
「女の子が笑っているだけの雑誌にはしたくなかった」
という、フランカ・ソッツアーニ。
伝説のピーター・リンドバーグのスーパーモデルの男装ストーリーが展開され、一躍ヴォーグイタリアを飛躍させ、スーパーモデルを作り出しトレンドを引っ張ることになった。
彼女もまた芯が強く、自分の考えが将来につながると強く信じて「決断」してきた人だ。
私は、いつも興奮してヴォーグイタリアの紙面をみていたので、クライアントから嫌われてコンデナスト社から解雇も辞さないと、強く抗議されていたと知り驚愕しました。
私は、ヴォーグイタリアでみるブルース・ウェーバーのストーリーに惹かれ興奮して、写真集まで購入したものです。
結果は、多くの若者に支持された雑誌となりました。
多くの物議をかもしたイタリアン・ヴォーグの特集
『ファッションはトレンド、デザインは問題解決、アートは問題提起』
イタリアン・ヴォーグの紙面は完全に「問題提起」でした
ファッション誌にモデルではなく有名人のマドンナを起用。
これはヴォーグでは初めてのことだったようです。
マドンナの問題提起写真集「SEX」もこのイタリアンヴォーグの問題提起ストーリーの常連カメラマン、スティーブン・マイゼルとの撮影でした。
- メキシコ湾原油流出事故
- 黒の価値
- 整形問題
- アフリカの再定義
黒人モデルだけを取り扱った「Black issue」はすぐに売り切れ、店頭から姿を消し、異例の増版となった。
イタリアン・ヴォーグで歴史に残る特集の一つです。
日本では、あまり有名にはなりませんでしたが、興奮して読んだので興味深かった・・・
そのつど物議を交わすが次第に、「視野が広い、独自の視点」や多くのカメラマンを見出したことなど次第に評価されていく。
彼女自身も常に前向きで、雑誌は発売された時点で「過去の物」と一刀両断
評価も気にせずに前進する力強さは、華奢な容姿からは全く想像つきません。
フランスの哲学者が彼女について語っていることが、一ビジネスマンの枠をはるかに超えている証拠に他ならない。
日本にいるとわからない事実が見えてとても良いドキュメンタリーだった。
2大VOGUE編集長のファッションドキュメンタリーの感想
とても面白かった。
ファッションを愛する人、何か新しいものにチャレンジする人、マネジメントの立場の方
に見て欲しい。
闘う2人の女性編集長であり、一人の人間を写すフランカ・ソッツアーニと一流のビジネスマンであるアナ・ウィンター
イギリス人とイタリア人との違いなのか、息子が撮影しているからパーソナルな内容に近いのか。
同じ土俵でありながら対照的な女性のドキュメンタリーが楽しめます。
アナ・ウィンターのライバルはすでに皆他界してしまって、彼女も71歳。
ファッション業界の後継者も気になりますね。
いつまで、彼女がトレンドを決めてけん引続けないといけないのか。
ファッション業界に興味なくても日曜日の午後、英気を養って日曜日から戦場へ向かう皆様にお勧めです。
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